デンマークのDV被害者支援その2 子どもへの手厚い支援

デンマークのシェルターは、ネットなどでもすぐに分かるように電話番号や住所が公開されていて、びっくりします。日本では、公的なものであれ、民間のものであれ、住所を公開しているシェルターはまずあり得ないので、危険じゃないのかしらと、心配になりますが、「何かあれば警察が来てくれるから大丈夫なのよ」と言われていました。そして、「普通の生活をすることが大事なんです」と強調され、普通ということを大事にするからこそ、子どもたちは、シェルターから毎日学校や保育園へ通うし、女性の外出も自由です。なるべく、それまでの生活と同じようにするこことを大事にしています。携帯電話の使用も自由で、SNSでどこにいるか分かってしまうので、困ったことだとは言っていましたが、だから禁止するとかにはならないのが、日本とは違うのだなあと思います。ただし、デンマークでもイスラム系の女性を匿うシェルターは、いわゆる「名誉殺人(一族の名誉をけがした女性は殺害してもよい)」が親族で認められている文化のため、女性たちがとても危険であり、場所は厳しく秘匿されているということです。

 女性支援の手厚さと同時に、DVでお母さんと一緒に避難してきた子どもたちのケアが手厚いことは、これまで報告書等で読んではいましたが、やはり実際に見るとその充実ぶりには驚きます。どのシェルターも建物の中に、子どもたちのための遊び場やおもちゃが、豊富に、しかも間に合わせのものではなくて、専門家が吟味したことがわかるおもちゃがそろっています。デンマークはブロック「レゴ」発祥の地ですから、もちろんレゴもたくさんありました。お庭の遊び場も、遊具や砂場が整備され、安心してのびのびと遊べます。子どもが遊ぶお部屋の家具の材質やや椅子、クッションの色使いなども、温かみがあり、落ち着けて、歓迎されているという気持ちになります。
 左はヒレロスという町のシェルターの外観、古いレンガ造りで普通の家と同じ。道路沿いには似たようなおうちがたくさん。このシェルターは駅から5分。とても便利な立地です。内部は最近改築して、広くしたそうです。

 

 

 

 

 

ヒレロスのシェルターの中庭。

子どもの遊び場。実物大の木製の親子のカバさんはみんなの人気者。

 

 

 

 

 

同じく、ヒレロスのシェルターの共用居間。窓からお庭が見えています。

 

 子どものケアのためのスタッフとして、保育士やペタゴーグ(日本流に言えば教育指導員かな)が必ず配置され、土日には、子どもたちを連れて公園や動物園や博物館へ行くなど、充実したスケジュールが組まれています。暴力のある中で育った子どもたちは、他の家庭の子どもと比べて、公園や動物園などで遊ぶ経験そのものが少ないから、とも言われていましたし、お母さんたちがまだ心身ともに疲れ果て子どもの面倒をみられない時に、子どもたちのケアを手助けするという意味もあります。

 

「あなたの今日の気持ちはどれかな?」
いろんな表情が描いてあるポスターが、居間の壁にはってありました。
これはノルウェーのATVで作成されたものだそうです。

 シェルターには、ボランティアのかたも出入りしていて、子どもに絵を教えたり、疲れたお母さんの手助けのために食事づくりや掃除の手伝いをしたり、といったボランティアも来ているとのことでした。しかし、スタッフの給料などは、他の職業と同じくきちんと保証されており、自治体から出る予算も桁違いです。日本の民間シェルターがどこも経営が苦しくて閉鎖を考えるところが多いという現状と比べて、ため息が出る思いでした。

 

 

 デンマーク女性協会のシェルター内部。

子どもの部屋。お絵かきに使っている。紫と黄緑で統一されたインテリア。
この日もボランティアの女性が絵を教えに来ていました。

おもちゃや画材などが豊富にあり、

ここにいる子どもたちが、「自分は大事にされているんだ、

自分はいてもいい存在なんだ」と実感できると思います。

まだまだ「安全確保」で手いっぱいの我が国の

シェルターの状況と比べて、豊かさとは何かと、

どうしても考えてしまいました。

                        

                            

  子どもたちにも母親にも、「普通の暮らし」ということをとても大事にしているので、ここから毎日学校へ行くこと、いっぱい遊ぶことのほかに、母親が作っ た食事を食べるということも大事にしているそうです。日本のシェルターは、どうしても安全性第一で、女性も子どもも外出が自由にはできない所が多いので、 そのこと自体、ストレスが溜まると思いますから、その点でもずいぶん差があると感じます。

 キッチンは、多くのシェルターで、3家族で一つの台所を共有するような作りになっており、広々とした美しいキッチンです。しかも、ひと家族ごとにちゃんと冷蔵庫や棚が別々に確保されていて、キッチンの広さが我が家のリビングぐらいの広さ。整然と片付いていて、北欧家具のモデルハウスを見ているような、そんな感じです。(コペンハーゲン市内にあるデンマーク女性協会のシェルターで。白で統一されたキッチン。左側の壁のようなのは、上が戸棚で下が冷蔵庫)

 「普通」ということを大事にするということは、結局、日々の生活の質を常に意識するということだと思います。学校へ行き、食事をし、楽しく遊ぶ、それらが満たされて初めて、普通といえるわけで、それが満たされていないのは、普通ではないという考え方です。労働時間が守られ、家庭生活に重きを置き、休暇をきちんと取ることが大事にされる、それが当たり前と言われれば、こんなに当たり前のことはないのですが、振り返ってみて、今の私たちの生活、それがちゃんと守られているかどうか、疑問を感じてしまいます。

 

 

 

「デンマークは自転車王国」

電車にも自転車は堂々と持ち込めます。

もちろん大きなベビーカーも。

(自転車用車両のマークがついた電車)。

 

 

 

 

コペンハーゲン駅の外の自転車置き場
二段ですごい積み上げかた。