デンマークのDV被害者支援その1 ダナーハウス

シルバーウイークに、思い切ってデンマークのコペンハーゲンに行ってきました。福祉国家で世界一国民の幸福度が高いと言われるデンマークでも、残念ながらDVはあります。デンマークのシェルターはとても充実していると聞いていたので、ぜひシェルターの見学をしたいと思っていたので、頑張っていってきました。
3か所のそれぞれ個性的なシェルターを見せていただいたので、順次、ご紹介をしたいと思います。

なんといってもデンマークを代表するのは、ダナーハウスという女性運動を象徴する建物です。これはもう、何と言えばいいのか、大きなお屋敷、それも140年前のレンガ造りの教会のような立派なお屋敷です。コペンハーゲンの駅から歩いても20分とかからない中心地にデーンと立っています。

 19世紀にデンマークの王様フレデリック7世に愛されたダナー夫人という方がいて、もと王立劇場の踊り子という、いわば貧しい出身だったので、正式な結婚が認められ ない立場だったということですが、王様の死後も、ダナー夫人は、貧しい人のための施設や孤児院を作り、その一つとして、貧しい女工が無料で住める52室あ る宿泊施設を作り、ダナーハウスと呼ばれました。これが1875年のことです。

時代と共に、女性たちの労働環境はよくなり、このような住居は必要なくなり、1979年になったときは数人の高齢女性が住むだけとなって荒れ果てていました。お金もかさむということで管理していた財団が、この家を売り払うという状況になり、聞きつけた女性たちがここを占拠して、さまざまな女性運動の拠点としました。女性たちは寄付を募り、約5000万円を集めてこの家を買いとることができ、荒れ果てた家を修理して、このダナーの家は、デンマークで初めてのDV被害を受けた女性たちのシェルターになったということで、まさに歴史的な記念すべき家なのです。
数年前にさらにお金をかけて中が改築され、シェルターも改装されて心地よく整備され、18組の親子が住めるようになっています。その他に、いくつかの女性のための活動をしている団体が、このダナーハウスを共有して使っています。バス通りに面した大きなホールの窓には、赤いペンキで、女性のマークの丸の中にこぶしを描いたロゴマークが大きく描かれ、力強くアピールしています。(写真の窓のマークにご注目)


また、表通りに面した庭には、新しいDV防止のキャンペーンとして、いろんな女性たちの靴を片方ずつ真っ赤にペイントして、畳3畳くらいの赤い板の上に張り付けた大きなオブジェがおいてあり、靴が女性の自立の象徴として表現されていました。


赤いハイヒールをデザインしたパンフレットには、暴力を受けていた日を振り返った女性のセリフとして「あれ(暴力)は愛だと思っていた。でも、私は今一人で立っている」というキャッチコピーが添えられてすごく素敵です。

シェルター部門の責任者のビルテ・ラングレンさんにお話をうかがいましたが、

「ここは都心なので限界はあるが、植物の癒しの効果を考えて中庭を整備しました。また、子どもたちはシェルターから学校へ通っているけれども、どうしても行けない事情がある子どもたちのために、施設内に学校を作ろうと思って、専用のお部屋も整備したのに、国から学校として認められず残念なんです」などと、日本からみれば「そこまでやるの!」と思うような発想を行動に移しているようすがうかがえました。

コペンハーゲン市からシェルターに対して支払われる費用も、入所者1人当たりにつき人件費その他の経費を含めて1日約35000円という、日本から見たら1けた計算が違っているんじゃないのかしらと思うほどの予算です。
DVで離婚した場合の子どもの面会交流についても少し伺いましたが、単独親権となる日本と違って、離婚しても共同親権なので、父親の家へ泊まりがけの交流等も子どもの安全を前提に、認められることが多いとのこと。しかし、面会交流は親の権利ではなく、あくまで「子どもの権利」なんですよ、と子どもの幸せのための考え方を強調されていました。
シェルターを出た後の女性たちの支援をもっと充実させないといけないとも話され、今は、シェルターを出た女性たちのグループづくりをすすめ、悩みをお互いに話しながら交流をする場を作っているとのことでした。

グループには入れない人もいるので個別の訪問等も必要で、これには、もっともっと予算が必要ですと言われていました。
予算獲得のためには政治を動かさねばという事で、政治家へのロビー活動も盛んです。毎年、この時期は、デンマークの各党の政治家がボーンホルム島に集まって会議をするそうで、それにむけて働きかける準備中とか。そのための広報戦略にも力を入れています。来週は、ネルソンマンデラの娘さんがここのシェルターに入っている人たちと話すために来訪するのだとか。

 

ダナーハウスの最上階には、新しくナレッジ・センターといういわば広報担当部署が置かれて、若い女性たちがパソコンに向かって、アジアや中東など世界の女性たちに向けての発信もしているとのことです。
すてきなポスターも何種類も作られていて、ポスターやキャッチコピーの作り方がすごくセンスがいいと思いましたし、それにかかわっている若い女性たちがたくさんいるのも素敵だなあと思いました。

 

 

 

なお、デンマークのシェルターについては、ドメス出版から2013年に「あたり前の暮らしを保障する国デンマーク~DVシェルター、子育て環境」(編著 上野勝代、吉村恵他)が出ています。すばらしい報告書ですので、ぜひお読みください。